八重樫さんは太陽の首に縄を掛ける。
「これからするのは菱縄縛り、こないだ君も見たやつだ」
そして、太陽の体に縄を掛けていく。
「まず、縄の真ん中あたりを首に掛けて一回結ぶ」
実際にやりながら説明してくれる。
「股間までの間にだいたい3つか4つくらいになるように結び目を作っていく」
「ちょ、ちょっと待ってください」
僕はカバンからノートを取り出した。太陽の画像を撮り、ノートにメモする。
「結構簡単だから、すぐに覚えられるよ」
さらに縛りながら説明してくれる。その様子を撮影し、メモを取る。
「こうやって結び目の間に通して、菱形を作っていく」
(あ、だから菱縄縛りっていうんだ)
八重樫さんが縄を引っ張る。太陽の体が蹌踉ける。
「あの、どれ位の強さで縛るんですか?」
すると、八重樫さんがまた縄を引っ張った。
「縛られる方が初心者だったら緩めでもいいけど、こいつの場合は思いっきりきつく縛る方がいいだろうな。そうだよな?」
「はい」
太陽の目が少しとろんとしているように見える。息が少し早いように思う。
「大丈夫・・・なの?」
「これは縄酔いだ。まぁ、縛られ慣れた上級のどMならこうなる奴もいる」
(ってことは、太陽は上級のどMなんだ)
八重樫さんがまた縄を強く引く。
「この時、体と縄が擦れると皮膚が裂けたりすることがある。だから、こうして・・・」
八重樫さんが縄の下に自分の手を入れて、太陽の体に縄が直接当たらないようにする。
「そして、締める」
(M奴隷に気を遣うんだ)
「縛る側にも守るべきルールがあるんだ」
(へぇ)
「余った縄で手をこうして」
両手に縄を巻いていく。
「これで、一応完成だ」
あの、いかにもSMって感じの縛り方があっという間に出来上がった。
「簡単だろ?」
いや、そう言われても、正直よく分からない。
「じゃあ、一度やってみようか」
そして太陽の縄を解く。
「ほら」
その体に赤い凸凹の痕が付いていた。
「これが、条痕、つまり縄の痕だ」
さっきの縄の痕が、太陽の体にくっきりと残っている。
「きつく縛ると当然条痕もはっきりと残る。Mはそういうのが自分の体に残るのが嬉しいみたいだな」
太陽がうなずいた。
「じゃ、次は諒君がやってみなさい」
僕は縄を渡される。
「まず、真ん中辺を首に掛ける」
太陽の日に焼けた首に縄を掛ける。
「次に体の前で結び目を作って」
八重樫さんの説明、スマホの画像、そしてノートを見ながら縛っていく。
「後ろから、結び目の間に縄を通して・・・」
教えられた通りに縄を這わせていく。
「こんな感じ?」
少し離れて太陽を見る。ちょっといびつだったけど、一応菱形が出来ている。
「ちょっと緩いな」
形を作るのに夢中で、きつく縛る、というのを忘れていた。縄を引っ張ってきつく締めていく。僕が縄を引くのに合わせて、太陽の体が蹌踉ける。
(さっきみたいに痕が付くのかな)
「ほら、縄を引くときは、直接体に縄が当たらないように注意して」
そうだった。縄と太陽の体の間に手を入れて、縄を締める。
「こんな感じでどうですか?」
なんだか、さっきより縄と太陽が一体化しているように見える。
「かなり縄が食い込んでるな。痛くないか?」
八重樫さんが太陽に聞いた。
「大丈夫です」
太陽がうつむいて答えた。
「ホントに? 痛くない?」
僕が聞くと、顔を上げた。なんだか顔が赤い。
「大丈夫、気持ちいい」
「酔ってるな、縄に」
佐伯さんが少し笑う。
「じゃ、縛りはこんな感じ。そのうちもっといろんな縛り方を教えてやるよ」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、次は・・・」
八重樫さんが、赤い蝋燭と鞭、長さ1メートルくらいの細い棒のような物を持って来て、僕の前に置く。
「なにがいい?」
僕はしゃがむ。手が蝋燭に伸びる。別に意識した訳じゃない。でも、SMと言ったら蝋燭じゃないだろうか。
「じゃ、火を点けて」
八重樫さんが小さなマッチの箱を差し出した。それを受け取って、蝋燭に火を点ける。
「やっぱり、SMっていったら蝋燭ですよね」
八重樫さんに尋ねた。
「それは人それぞれだな。そのまま少し蝋が溶けて溜まるまで待つ」
蝋燭を動かさないように持ち、蝋が溶けて溜まるのを見る。
「ある程度溜まってきたら、体に垂らす」
太陽に近づく。その体の上で、蝋燭を傾けた。
「あっつ」
太陽の体が跳ねた。続けて垂らしていく。
「熱がるようだったら、少し体から離して遠くから垂らす。逆にもっと熱がらせたいなら近くから垂らす」
(そうか。距離がある方が冷めるからね)
僕は太陽の胸の前で、炎の先端を乳首の少し下に近づけた。
「うあっ」
太陽が体をねじる。
「動くなよ」
太陽の顔を見て言う。もう一度炎を近づけた。
「Sだねぇ」
佐伯さんの声だ。
「うううう」
太陽が苦痛の声を上げる。辛そうな顔をしている。僕は蝋燭を太陽の胸から離し、そのまま後ろ側に回った。太陽の背中の方から手を前に回して、太陽のちんこを握る。そして、そこに蝋を垂らした。
「ううっ」
太陽が後ろに下がろうとした。でも後ろには僕がいる。太陽は下がれない。僕は太陽のちんこの皮を剥き下ろす。
「はぁ・・・はぁ・・・」
太陽の呼吸が聞こえる。露出した太陽の亀頭に蝋を垂らす。
「いぐっ」
僕が握っている太陽のちんこが一瞬ビクンと動いた。
「気持ちいいの?」
「はい」
小さな声で答える。その割には、ちんこは硬さを失いつつある。僕は太陽の体を後ろから押して、鏡張りになっている壁に向かわせた。
「太陽がよく見えるよ。太陽も僕を見て」
僕等は鏡越しに目を会わせた。太陽のちんこの皮を剥いて蝋を垂らす。
「あがっ」
太陽が熱そうな顔をする。
「気持ちいいんでしょ?」
「は・・・い」
太陽の返事が終わった瞬間、また同じように蝋を垂らす。鏡の向こうの太陽の亀頭は、赤い蝋でほとんど覆われていた。
「どSじゃねぇか」
城戸さんが言った。
「太陽は気持ちいいんだもんね」
「はい」
左手で太陽の亀頭を揉んでみる。蝋がぽろぽろと剥がれ落ちた。そのまま左手で扱く。
「ほら、勃起させろよ」
僕の言葉に反応してすぐに硬くなる。
「じゃあ、いくよ」
鏡越しに太陽の顔を見ながら、また亀頭に蝋燭を近づける。太陽の顔が、微かに怯えている。蝋を垂らす。その表情が苦痛に変わる。
「ひぃぃぃ」
太陽が変な声を出した。
「そんなに気持ちいい?」
太陽は何も言わずにうなずいた。

僕は太陽の腕の縄を解いて、仰向けに寝転がらせた。
「じゃあ、足上げて」
太陽が足をぎゅっと抱える。まるで僕が何をやりたいのか分かっているかのように、お尻を僕に晒す。
「ここにも蝋燭欲しいよね?」
お尻の膨らみに少しずつ蝋を垂らす。それは徐々にその中心に左右から向かっていく。
「覚悟はいい?」
そして、太陽の穴に蝋を垂らした。
「うっ」
思ったより反応が薄かった。だったら・・・
「指で穴、開いて」
チラリと僕を見た。両手でお尻を開き、穴を晒す。さらにその穴に力を入れて開いて見せる。
「もっと」
穴に指を入れて左右に開く。
「いい、そのままだよ」
僕は穴の中をめがけて蝋を垂らした。

「いきなり壊したりするんじゃないだろうな」
城戸さんの声だ。
「それは大丈夫でしょ」
佐伯さんが言った。
「まぁそう簡単に壊れるような玉じゃないし」
「でもまぁそろそろ次に」
そして、八重樫さんが僕に声を掛けた。
「じゃあ、鞭に行こうか」
太陽のお尻に蝋を垂らすことに夢中になっていた僕は、その声で現実に引き戻された。太陽のお尻にいくつもの赤い蝋の痕が付いていた。

「鞭にはいくつか種類がある」
八重樫さんは3種類の鞭のような物を持って説明してくれる。
「まず、いかにも鞭って奴だ」
その鞭は長さが3メートルくらいありそうだ。
「これは、猛獣に対してだとか、奴隷制時代の奴隷を罰する時に使われた鞭だ。持ってみろ」
渡される。持ってみるとずっしりと重い。
「それは実際に使われていたという代物だ。かなりの威力だよ」
僕はその鞭を振り上げる。
「太陽、立て」
「待て待て」
八重樫さんが僕の手からその鞭を奪った。
「これはこの部屋でも振り回すには長いし、威力もありすぎる。死にはしないが、簡単に皮膚くらい裂けるし、当たり所が悪ければ骨折とかもする」
太陽を見る。勃起している。
「でも、それでやられたそうだけど」
八重樫さんは首を左右に振る。
「これはSMで使うには本格的過ぎる」
その鞭を城戸さんに渡す。城戸さんはそれを束ねて壁に掛けた。
「SMで使うなら、特に普通の家で使うんだったら、せいぜいこれだろう」
それはさっきの鞭の半分くらいの長さだ。
「こっちは軽いから、これが当たってもそれほど痛くはない」
手渡される。八重樫さんが目で太陽を指し示す。鞭を持って、太陽に向き直る。
「欲しい?」
太陽はうなずく。ちんこからガマン汁が出ていた。僕は太陽の横に移動して、その背中めがけて鞭を振るった。
「ぐっ」
太陽は2、3歩蹌踉けるように歩き、しゃがみ込んだ。背中に赤い筋が一つ浮かび上がる。
「軽くてもそのレベルだ。最初の鞭がどれほどのものか、想像出来るだろ」
八重樫さんがしゃがみ込んでいる太陽の背中を見る。
「裂けてはないから大丈夫だな」
そして、最後の一つを僕に見せた。
「これは鞭というより、棒だな。ウィップって呼ばれる物だ」
それは長さ7、80センチくらいの少ししなる棒の先に、三角形の平たい革で出来た物が付いている。それを手渡される。
「これ、見たことあります」
これと同じ物がネットの動画に出てきた。
「お尻出せ」
しゃがんだままの太陽に命じた。太陽は四つん這いになって、僕にお尻を突き出した。そのお尻をウィップで叩く。ピシッと音がする。
「痛い?」
太陽はあまり反応しなかった。
「じゃあ」
こんどはさっきより強く叩いた。
「それは一発での痛みというより、言うことを聞くまで叩き続けて従わせるって感じかな」
八重樫さんが教えてくれる。
「何度も叩かれてると赤くなって、最後は腫れ上がる」
「ふぅん」
先の革の所を指で摘まんでみる。軽く自分の腕にそれを振り下ろしてみる。確かにあまり痛くはない。でも、思いっきり強くやったらどうだろう。太陽のお尻に思いっきり振り下ろしてみた。
「うぐっ」
ぱぁんと大きな音がして、太陽は少し呻いた。
「痛い・・・です」
(そうか。これでも痛めつけることは出来るんだ)
「必要なら、その棒のところで叩くことも出来る。ま、普通に使うならそれでいいだろう」
僕は太陽を立たせて足を開かせた。太陽はやっぱり勃起して、ガマン汁を滴らせている。
「欲しい?」
「はい」
僕は太陽の勃起したちんこをウィップで打ち据えた。
「うぐっ」
太陽が腰を引く。そのお尻をウィップの棒の部分で叩く。
「くっ」
「ほら、ちゃんと立って足開く」
太陽は僕の命令に従う、
「じゃあ、次は」
太陽の玉を軽く打った。
「うっ」
続けて何回か打ち、最後にかなり力を込めて打ち付けた。
「ぐっ」
太陽がまたしゃがんだ。さっきの背中の赤い筋が、ミミズ腫れになっていた。
「まぁ、取りあえず初心者向けにはこんな感じかな」
八重樫さんが言った。
「これを組み合わせて、しばらくは諒君なりの調教をしてみなさい」
「はい、ありがとうございました」
僕は八重樫さんに軽く頭を下げた。
「最後に、SM調教の心構えを教える」
少し、声の雰囲気が変わった気がした。
「あくまでもSM調教は調教する側とされる側がいて初めて成立する」
僕はうなずく。
「昔、なにかの本で、『愛のない鬼畜は鬼畜じゃなくて猟奇だ』、なんて馬鹿馬鹿しいセリフを見たことがある。それに倣っていうなら、『愛のないSMはSMじゃなくて、ただの虐待』だと思う。ご主人様は奴隷に対して愛情を忘れないこと、そして、奴隷は全てをご主人様に捧げてご主人様の為に尽くすこと。お互いがお互いの幸せのために調教し、調教されるということを忘れるな」
「はい」
僕と太陽が同時に返事した。


      


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